大学受験生のほぼ全員が受ける共通テストには、実はIQ検査の要素があります。この事実がもつ意味を考えることで、最短時間で共通テストを攻略できます。
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大学入試と知能検査
共通テストやセンター試験を実施する独立行政法人、大学入試センターは、知能検査のノウハウを持っています。知能研究の専門家が内部におり、公務員試験で出題される知能分野の問題の研究開発も行っています。
単にノウハウを持っているだけでなく、知能検査そのものを実施したこともあります。法曹人材の育成を目的とする法科大学院の入試においては、「適性検査」という知能検査が大学入試センターによって数年前まで行われていました。時期によりその取扱いは異なりますが、下位20%以下の成績では出願資格そのものが無くなるとされた時期もあり、なかなかに厳格で重みのある取り扱いをされていました。
実は、大学入試においても知能検査が入試科目として取り入れられていた時期があります。1947年~1955年という終戦直後の短い時期ではありますが、「進学適性検査」というIQ検査が実施されていました。現在でも、国際基督教大学の入試問題はIQ検査の要素が組み込まれています。
共通テストは、知能検査の要素がある
大学入試センターは知能検査のノウハウを持っているという事実は、共通テストを受ける受験生に大きなヒントを与えてくれます。端的に結論をいえば、「前提となる知識のベースが薄くとも、その場で考えれば解ける問題がある」ということです。つまり、問題を解く際にその分野に関して全ての知識を有していなくても、類推や論理的つながりで解けるように、もしくは解きやすいように作問しているわけです。
分かりやすく例を示せば、共通テスト試験日の直前にテレビ番組『タモリ倶楽部』で関連する題材の取り扱いがあったことでニュースにもなった2021年共通テスト地理・第5問の問3などはこれにぴったりと当てはまります。この問題は、天橋立が何かを全くしらずとも、地図上に示されたある特定の場所からの光景を頭の中でイメージすることができれば正解できます。これは明確に空間図形の能力を計る問題であり、知能テストと極めて近い、というよりむしろそのもののような問題です。このような知能検査的傾向は、センター試験から共通テストに移行してより一層顕著になった印象があります。
二次試験の問題は解けるのに共通テストが苦手な受験生へのアドバイス
よく受験生に相談される悩みごとの一つに「二次試験は解けるけど、センター試験・共通テストが苦手」というものがあります。実際、十分な学力がありながらセンター・共通テストでコケてしまい、弱気の出願に追い込まれるケースはしばしば目にします。そういった子は、学力自体はあるので順当に格下の大学に合格するのですが、やはり本人としてはその結果に不満を抱えてしまう場合もあります。もちろんより大切なのは大学に入ってからですから、本人の高い学力が無駄になるわけでは全くありませんが、希望校に受かるに越したことはありません。せっかくの高い学力を正当に評価してもらうためには、これから述べる2つの意識をもって過去問演習を行うことです。同じ教材を同じ時間やるにしても、こうした意識をもっているかいないかで効率は大きく変わります。
①選択肢の全てを理解できなくても問題ない
学力のわりにセンター試験・共通テストを苦手とする受験生は、センター試験・共通テストがもつこうした知能テストとしての性質をよく理解していない傾向があります。つまり、「試験問題」とは、すべからく事前に十分に準備された知識を用いて解くべきものであるという固定観念が強いのです。このような子は、センター試験や共通テストを解いてみて分からない問題があった場合、背景となる知識を全て理解・習得しようとする傾向があります。しかし、繰り返しますが、センター・共通テストは、その場の問題文の手がかりや前後の問題との相対的な位置づけの中で類推的に答えを導き出せる場合が多くあります。というより、むしろそのような要領の良さを出題側は見たいのだと思います。
ですから、センターや共通テストの過去問を分析する際には、「知らない知識を吸収しよう」という意識よりもむしろ「どうしたらなるべく少ない知識で解くことができるか」という視点から分析することが大切です。つまり、選択肢の全ての知識を完全に理解する必要は、こと共通テストにおいてはないということです。一見、非常に高度でマイナーな理解や知識を要求される選択肢が一つあったとしても、他の残りの選択肢が非常に単純で基礎的な知識しか問われないものであった場合、その問題での正解を導くのは容易です。この場合に、問題に正解できたにも関わらず分からない選択肢があったことに不安になり、また出るのではないかとの恐怖心からそのマイナーな知識を全てマスターしようとする必要はありません。それは大学入試センターの意図ではないからです。このような意識で演習を行えば、共通テスト対策に費やす時間を大幅にカットすることができますし、選択肢を選ぶ際の重要なヒントになります。
②思考パターン自体を読み取る意識で問題を分析する
また、知能検査の要素が大きいということは、初見性が高い問題を出す傾向が強いことを意味します。言い換えると、用いる知識が同じでも切り口を大きく変えて出題されることが多いので、センター・共通テストが好む思考パターン自体を読み取る意識で演習しましょう。知識そのものというより、解答の手がかりや根拠を見つけ出す過程それ自体にパターンがあります。特に誤答の選択肢の作り方には強烈な癖があります。コツがわかるようになると、現代文などは選択肢を読むだけでもかなり絞れるようになります。