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単語学習にはレベル感がある
単語を学習する際に意識しておくべきは、それぞれの記憶・理解の程度にレベル感があることです。すなわち、以下のように分けることができます。
①スペルを見て意味が思い出せればよい単語
②スペルも書ける必要がある単語
③日本語に対応する概念がなく、英語の概念をそのまま理解する必要がある単語
受験において①多くの単語はスペルを見た時に意味が思い出せればそれで充分です。その中でも②英作文に用いやすいものに関してはスペルも覚えておきましょう。これだけならなんということもないのですが、問題は③です。そして長文読解の問題などで多く狙われる部分でもあります。では、どういった単語が③に該当するのかというと、日本語に対応する概念が無い場合です。
日本語と英語とで、必ずしも正確な対応関係があるわけではない
英語を学習する際に、一つ頭にいれておいて欲しいことに、日本語と英語とで一対一に対応する単語や文法的概念があるわけではないということです。
日本語の起源は諸説ありますが通説の一つはアルタイ語族とするものであり、これに対して英語の起源はインド・ヨーロッパ語族に求められます。つまり、先祖が全然異なるということです。とすれば、当然に日本語にはあるけれど英語にはない概念もあるし、その逆もあります。
日本語に対応する概念がない単語の場合、訳を逐語的に暗記するよりもその概念を掴んだ方が結果として近道になります。そういった単語は、網羅的に意味を丸暗記しようとするのではなく、少しだけ時間をかけ深く掘り下げて理解すべきです。それにより、和訳や長文読解でもニュアンスをつかみやすくなります。
念のためにいえば、英語と日本語とでは、厳密に言えば全ての単語が、濃淡はあれどこのような違いを抱えています。appleとりんごのような単純な名詞をとってみても、appleが想定するのは西洋種のそれであり、りんごが想定するのは日本種のそれです。また食生活・食文化が異なる以上、appleがもつ象徴的なイメージもりんごのそれとは違うものになるはずです。しかし、時間の限られる受験生においては、全ての単語でこのような掘り下げを行っていては時間がいくらあっても足りません。
これに関連して述べると、よく「英語は英語のまま理解するべき」といった趣旨の主張を目にします。もちろんそれが理想的であるにしても、母国語の取得後に第二外国語として英語を学ぶ場合、これは一朝一夕にできることではありません。日本語の訳が頭に浮かんでくることをいちいち気に病んでいては滅入ってしまいます。ですから、受験生の段階では「単語を丸暗記してはいけない」「英文全てをそのままに理解しなければならない」と強迫的に思い詰める必要はありません。
しかし、一部の単語については、頻出程度とニュアンスの理解の難しさから考えて、少し時間をかけて踏み込んで理解する必要があります。日本語に対応する概念自体が全く存在しないような英単語においては、英語を英語のまま理解する作業をしなければ単語そのものの概念を把握できないため、直観的な理解が必須です。
では、どのような単語が「③日本語に対応する概念がなく、英語の概念をそのまま理解する必要がある単語」にあたるのか、例を挙げて説明しましょう。こうした単語の場合は、英語と和訳との対応を丸暗記しても試験問題をスムーズに解けるようにはなりません。英語のイメージを理解しておく必要があります。そのような単語の一例として、ここではsupposeを取り上げます。
suppose
第三者が決めた考えに拘束されているイメージ
suppose ~を想定する
be supposed to V (義務・規則・約束・期待によって) Vすることになっている、Vするはずだ
supposeの「sub-」は「下に」・「pose」は「置く」が語源であり、これが組み合わさることで「(考えの)下に置く」→「~を想定する」という意味になりました。
さらにbe supposedと受動態をとるわけですから、直訳すれば「(考えの)下に置かれる」となります。
大事なのは、この(考え)というのが、自発的な意思や決断というより「第三者が決めた考え=義務・規則・約束・期待」であることです。その下に少し窮屈な感じで自分の身が置かれている、といったイメージとなります。
このイメージが頭にあればそれで充分です。あとは文脈に沿って「Vすることになっている、Vするはずだ、Vしなければならない」といった感じで、最も適切な日本語訳をくみ取ればいいわけです。
過去形や否定形で出題されることが多い
was/were supposed to V Vするはずだった(が、実際にはしなかった)
be not supposed to V Vすべきではない
少し気の利いた入試問題の場合、過去形や否定形で出すことによって受験生を混乱させてきます
supposeの持つ「第三者が決めた考え=義務・規則・約束・期待」の下におかれているというイメージを忘れないでください。少しニュアンスが強くなりすぎますが、受験テクニック的にあえて一言で拘束と言い換えてもいいです。これさえつかんでおけば、過去形なら「過去に拘束されていた→現在は拘束されていない→Vするはずだったが、実際にはしなかった」、否定形なら「Vしないよう拘束されている→Vすべきでない」というように、スムーズに意味を把握できるはずです。
例文を上げると、You're not supposed to harm others.(他者を傷つけてはいけない)といった感じになります。
会話や長文読解では、全てを和訳する必要はない
概念的イメージさえ頭にあれば、ネイティブとの会話や長文問題でsupposeが出現した場合に、いちいち頭の中で日本語に訳す必要がなくなりますし、それができれば長文読解のスピードはかなり速くなります。
和訳問題として出題された場合には、日本語でどう表現するかをテクニック的に習得しておく必要はありますが、普段の会話や文章読解においては感覚的に理解していきましょう。英語を英語のまま理解するという感覚を掴むためのよい練習材料となる重要単語です。