国立大学の理系を志望する生徒は多くいます。しかし、国立理系は科目数が多いため成績の振るわない受験生はしばしば混乱し、照準の合わない散らかった勉強法を取りがちです。あれもこれもと気持ちばかり焦ってしまい、どの科目も成績が伸びず焦燥感に駆られます。気持ちの焦りが上滑りを引き起こし、手あたり次第頑張ってはみるものの判定は一向に上がらず、ついには自信を失ってしまいます。こういった生徒や保護者が「もう国立大学は諦めるしかないのだろうか・・・」と煮詰まった表情を浮かべて相談にくることがよくあります。
このような場合どうすればよいのでしょうか。共通テストと二次の全科目にわたって高い学力を涵養することが理想ですが、そのような理想的状態で受験当日を迎えられる受験生は希です。逆転合格を狙うならなおさらです。ポイントは「戦略」です。戦略とは、目標にむけて再現性の高い合理的な方法をとることです。具体的には選択と集中です。得点を取る効率性の観点から、物事の優先順位を明確に意識し正確に実行していくことです。
目次
対象となる受験生
進研模試GTZC1~B2、全統模試40前後の生徒が対象
本稿では、九州でいえば佐賀大学や大分大学など標準レベルの国立大学理系を志望しているものの、いまだ合格ラインに達しておらずE判定やD判定しかとれていない生徒が逆転合格するための核心的ノウハウを公開しています。目安として、進研模試の偏差値が50前後、GTZでいえばC1~B2、全統模試の偏差値なら40前後の子を対象とした話となります。こうした子は、偏差値60前後の高校でちょうど学年の真ん中付近に当たることが多いでしょう。高校の進路指導では地方の公立大学や福岡大・広島修道大などを勧められ、国立大学は諦めるように言われることが多いはずです。
逆転合格戦略についての情報が得られにくい背景
国立大学理系の受験戦略は、東大京大/医学部/標準レベルのそれぞれにおいて大きく異なります。ところが、一般の受験指導書で語られる戦略は前二者向けのものがほとんどです。そのため、標準レベルの国立大学理系の受験戦略について自体、あまり表に出ていない現状があります。
そもそも、標準レベルの国立大を狙う生徒は、学校中心に勉強を進めあまり予備校・塾に来ない傾向があります。予備校・塾に来る生徒は、最難関大学を目指す生徒か若しくは学校の授業にさえついていけてない生徒の両極どちらかであることが多く、標準レベルの国立大のメインの供給源である偏差値60前後の地方の高校生はあまり利用しません。これらの高校は、受験指導が厳しく宿題も多くだされる傾向があり、予備校に通うこと自体に批判的な校風があります。また、経済的事情から地元の大学にしか進学が許されず、落ちたら地元の私大や短大という生徒が多いことも特徴です。すなわち、塾や予備校への教育投資があまり活発でないため、予備校側としても研究を公開する機会とメリットがあまりありません。
さらに、以下に述べる戦略をとるに当たっては、多くの場合に物理や数Ⅲを捨てることになりますが、これは予備校・塾としては受講してくれる科目が大幅に減る可能性があることを意味します。これは経営の観点からは好ましいものではありません。特に物理と数Ⅲは、苦手意識を持つ生徒が多く営業担当からすると契約のクロージングがしやすい科目でもあります。したがって、予備校・塾側からこれらの提案を積極的に勧めることはほとんどありません。
そのような経営的事情を抜きにしても、大っぴらに公開しにくい理由があります。というのも、物理と数Ⅲを捨てるとなると、これはある種の"理系的道徳"に反します。大学入学後は、医学部等を除けばやはり物理と数Ⅲが必要になるケースが多いからです。
このような事情から、この手のノウハウは一部の新興進学校によって独占されてきた経緯があります。時折、同じ偏差値帯の高校と比較して異常なほど高い進学実績をだす学校がありますが、これらの高校は教科指導が優れているというより、この手の戦略に長けた指導者がいるケースが実は多くあります。中には行き過ぎて、生徒の志望学科や大学そのものまで強権的に変更させるケースさえありますが、ここで公開する方法はあくまでも自分の志望校にいかに効率的に逆転合格するかの部分に絞ってあります。
まずは合格を
まずは合格することを第一に考えた場合、標準レベルの国立大学理系は戦略が非常に有効な分野です。個々の科目の勉強を具体的にどうすすめるかという戦術は、定石はあるものの個人の資質による部分も大きく、再現性の面ではどうしても不確実な部分が残ります。それに対し、どの科目を捨てどの科目に力を入れるのかという戦略は、誰にでも実行でき、高い再現性があるからです。物理と数Ⅲは合格後に時間と気持ちに余裕がある状態で自分でやりましょう。
それでは、以下においてその具体的なノウハウを公開します。本稿は、さらりと書いてあるところでも実は重要なところがかなりあります。頭に定着するまで繰り返し読んで頭に焼き付け正確に実行してください。言葉の断片だけ覚えて、自分が実行しやすいところだけ部分的にやってもあまり意味がありません。戦略とは全体の統合性がなにより重要だからです。
国立大学理系、逆転合格への戦略7か条
①共通テストに集中する
まず全体的な方向性として、二次ではなく共通テスト対策に重点を置き、逃げ切りを図ることが戦略の根幹となります。
一般に受験生は、センター試験・共通テストでは点が低かったが二次試験で点を取り逆転合格したストーリーを好む傾向があります。いわゆる逆転合格のイメージに合致しており、また、ドラマチックで希望を感じさせることがその理由でしょう。さらには、この手の話を格好よいと感じ、二次試験で点が取れる人こそ優秀なんだとする価値観を持っているケースさえあります。生徒同士が雑談の中でこういった内容の会話をしているのをよく聞きますし、彼ら自身そういった会話を互いにすることでこの価値観が強化されている節があります。
しかし、はっきり言います。標準レベルの国立大学を狙う場合に合格可能性を少しでも高める最適な戦略は、傾向が相対的に明瞭でなく得点が安定しにくい二次試験での逆転を狙うよりも、得点効率の高い共通テストで逃げ切りを図ることです。逆転合格を狙うからこそ、共通テストでの逃げ切りが有効なのだという発想の転換が必要です。劇的な二次逆転のストーリーに自分を重ねず、確率の高い合理的な戦略を強く意識しましょう。
そもそも、当然ながら共通テストの実力と二次試験の実力とは強い相関が見られます。共通テスト対策もやらなきゃ、二次試験の勉強もしなきゃ、と散らかった意識状態ではなく、まずは共通テストで志望校の合格ラインに到達できるように集中してください。心配せずとも、共通テストがとれれば二次試験もそれ相応に取れるように自然になっていきます。逆に言えば、共通テストは大して取れないのに二次試験だけできるといった都合の良い状態にはならないと思ってください。東大京大等ではまた違った戦略が必要になりますが、一般的な国立大学では共通テストに意識を集中させて大丈夫です。共通テスト対策だけで合格する子は多くいますし、むしろそれが多数派です。
戦略の根本になることなので繰り返し強調しておきますが、GTZがC1~B2、河合全統が偏差値40前後の子が逆転合格するケースは、早い段階で共通テスト対策に的を絞り、そのまま逃げ切ったケースです。こうした子が二次試験で逆転合格するケースは極めてレアです。二次で逆転して合格する子は、もともと合格圏内にあるにも関わらずセンター試験・共通テストで本来の実力を発揮できなかった子もしくは特定科目だけが異常にできる子です。特に「特定科目だけが異常にできる子」に安易に自分を重ねないように注意してください。あなたが帰国子女でなく、また、英語以外の科目でもその科目が河合全統で偏差値70にすら達したことがないなら、大学のレベルに関わらずその科目の二次試験で逆転しようとは思わない方がよいと強く伝えておきます。
これに対して、センター試験・共通テストは、強烈なクセがある試験です(『【大学入試]共通テストは知能検査の要素がある』を参照)。慣れによる得点向上の余地が大きく、知能検査としてのコツを掴めば学力以上の点を取ることが可能であり、そもそもそのように設計されている試験です。
②可能なら、化学+生物or地学を選択する
生物は、主に医歯薬看護系を志望する生徒が選ぶことが普通で、実際のところ機械・土木・化学などメジャーな学科では選択できないことが多いですが、いま人気の情報系学科では、生物選択が可能な大学が多くあります。これを見逃す手はありません。特にセンター試験・共通テストの生物は負担が軽く、物理・化学に対してコストパフォーマンスが圧倒的に高くなります。志望学科において共通テストで生物が選択できる場合は、迷わず選びましょう。生物は、地理・現社に並び、平均点付近までは極めて短期間で到達可能な科目です。
多くの受験生は履修科目を選択する高2の段階においては志望学科がまだ明確でないことが多く、そのため教員も幅広く受験できる物理・化学選択を勧めてきます。同級生もその選択であることが多いため、流れにのって物理・化学を選んでいる場合が多いでしょう。事実、生物選択は出願の幅が狭まりますが、人気の情報学科では多くの場合に生物選択が可能なことには注目すべきです。これに対して物理は、一般的には生物・化学よりも努力が報われる割合が小さく、また得意な子であっても本番の問題次第では期待したほどの点がとれないことがしばしば起こります。
この問題をややこしくしているのは、適性がある子は物理を非常に短期間で習得できてしまう点です。そうした子は数Ⅲも得意であることが多く、物理との相乗効果が発揮され短期間で大きく成績を伸ばしますから逆転合格の体験談の中でも目立ちやすく、本人も自信をもって物理と数Ⅲの大切さを後輩受験生に説きます。また、彼らからみると生物は作業量が多く感じられるようで、物理より効率が悪いと主張する傾向があります。しかし、はっきりと申し上げて多くの子にとっては再現性のある戦略ではありません。希望的観測や理想を入れ込まずに冷静な選択をお勧めします。
既に学校の授業で物理・化学を選択している子でも、得点が伸び悩み、かつ志望校が生物選択可能ならば、迷わず生物の独学へ切り替えしましょう。
注意すべき点は、生物は出題傾向が掴みにくく、高得点帯では安定しにくい傾向があることです。化学が苦手でないならば、二次試験ではより安定しやすい化学を選択する方がよいですが、生物を選んでも反対ではありません。ただ化学よりは丁か半かの賭博性が高くなります。
また、これは別の機会に述べますが、大学によっては二次の地学の問題レベルが極めて低いケースがあります。自分の大学がこれに該当しないか、チェックしてみる価値はあります。たとえ標準的な問題であったとしても、一般的な生徒にとっては物理より圧倒的にコストパフォーマンスが高いので、受験科目として選択できるならば検討してみることを強く勧めます。幸い、独学には困らない時代です。
③理科2科目のうち、1科目は捨ててよい
標準レベルの国公立の場合、二次に使わない理科1科目は実質的に捨てても合格可能です。例えば、大分大学理工学部の配点を見てみましょう。大分大学理工学部知能情報システムでは、共通テスト・二次試験の配点は次のようになっています(共通テストでは生物・化学を、二次では化学を選択した場合)。
これをみれば分かるように、理科の2科目のうち、共通テストのみで用いる1科目が総得点全体に占める割合は実に5%以下しかありません。なんとなく勉強を進めている子は、志望校が定まっていないケースが多く、そういった子はたいてい各大学の配点を具体的に検討したことがありません。そうすると、理科2科目をベタに同じくらいの時間をかけて勉強しがちで、結果としてどちらも中途半端な点しかとれないことがよくあります。
旧帝大や早慶以外の学校は、二次試験の理科は1科目であることがほとんどであり、しかも共通テストだけで使う理科1科目は配点が極めて低いケースが多くあります。全科目の中で最も扱いが低いケースも多いため、授業だけを聞いて、結果として取れるだけとれればいいやと割り切りましょう。理科の2科目が、それぞれ50点・50点よりも、80点・20点の方が、遥かに合格可能性は高まります。
②で述べたように生物が選択できる場合は、共通テストでのみ使う科目を生物に設定し、平均点までは取れるようにしておきましょう。生物は平均点まで達する時間が極めて短い科目であり、配点が低くても対策する旨味があります。映像授業等で集中的に学べば、早い子では2週間程度で達します。それ以上になると得点効率や配点の観点からパフォーマンスが低下するので、平均点前後をとれるようになった後は放置しましょう。
志望学科が物理・化学必須の場合は、基本的に物理を捨てることをお勧めします。個人の資質によりますが、一般に物理は修得に時間がかかり、非常に負担の重い科目です。一方で向いている子は驚くほどの短期間でマスターするため断定は避けますが、現時点で物理・化学に大きな得点差がないのであれば、二次は化学を選択し共通テスト対策に力を入れ、物理は学校の授業と模試の復習だけに割り切りましょう。
④数Ⅲは捨てる
東京大・京都大・東京工業大・国立医学部・早稲田大・慶応大クラスを志望する場合は、この話は当てはまりません。これらの大学に合格する生徒は数Ⅲもしっかり押さえこんできます。しかし、地方の国立大学や明青立法中クラスを志望する大部分の受験生の数Ⅲの学力は、実は高いものではありません。
数Ⅲに対する過度の意識が勉強の偏りと不安をうみ、時間をかけてはみたものの得点がそれほど伸びず、結果として他の科目にかける時間もなくなってしまい、全科目が実力不足で受験本番を迎える失敗は、理系受験生によくみられる現象です。
それよりも、同じ数学に時間をかけるなら共通テストの数ⅠA数ⅡBをしっかりとることに照準を当てる方が、かけた時間に対する得点効率は圧倒的に高くなります。
これも共通テストのみで使う理科の捨て科目と同じく、授業だけはちゃんと聞いて、結果として取れるだけ取れたらいいやと軽く考えましょう。大丈夫です、他の受験生も大してできません。
⑤数学より、英語+二次でも使う理科1科目に力を入れる
別稿『【大学入試】文系理系に関わらず、英語を最優先すべき3つの理由』で述べたように、英語は本番で裏切りにくい科目であり、かつ標準偏差が大きい傾向があります。理系だから数学・理科で勝負する又はすべきであるという先入観があるかもしれませんが、一般的レベルの国立大学であれば、英語+二次でも使う理科1科目で他の受験生より高い点を取り逃げきる戦略の方が合格する確率は大幅に高まります。
二次試験の数学は極端に難しいか逆に極端に簡単な場合が多く、見かけの配点が高くても他の受験生との差をつける意味では実は難しい性質があります。東京工業大学等、数学重視の戦略的有効性が高い大学もありますが、一般的な国立大学理系の場合は、数学に偏った戦略を取らない方が逆転合格の可能性は大きく高まります。
数学を勝負科目にする旨味は、難問が出題され、かつ、自分が他の受験生に圧倒的な差をつけられるくらい高い実力があるケースです。この場合は、奇跡に近い逆転合格を起こす場合が確かにありますが、一般的には数学の問題の難易度が高い場合は受験生間の標準偏差の開きが小さくなり、むしろ数学が苦手な子に有利に働きます。
念のために繰り返しますが、「英語+二次でも使う理科1科目に力を入れる」とは、二次の勉強に力を入れろという意味ではありません。①で述べたように、共通テスト対策を最優先にしてください。東大京大は別ですが、一般的レベルの国立大学理系の場合、共通テストで高い点数が取れるだけの実力があれば、二次で他の受験生に置いていかれるほどの点しか取れないことはまずありません。
⑥社会はできるだけ政経を選択する
文系にも興味があり悩みに悩んで最終的に理系を選択した子の中には、興味が湧くからと日本史や世界史を選択する子が時々います。しかし、よほど得意でない限り、定石通り地理か現社か政経を選択すべきです。この場合の「得意」とは、高2の同日模試の段階で共通テスト7割5分程度を取れるくらい高い実力を指します。つまりよほどのことがない限り避けるべきです。世界史・日本史と他の科目ではかかる時間が圧倒的に違います。
社会にかける余裕が全くといっていいほどないならば地理か現社を選択しましょう。この2つは高得点を狙うには政経よりも大変ですが、最小限の勉強で平均点を狙う分には政経よりもはるかに楽です。そもそも一般常識やその場の類推で解けるものも多く、出題側もそうした要領の良さを見たいのだろうと思わせる問題が多くあります。注意点として、現社は出願できる大学に制限があるので、志望校で選択できるかどうかを最初に確認しておくことが大切です。
逆に、それなりに時間的余裕があるならば政経を選択し、共通テストでの逃げ切りの一助としましょう。政経は、かけた時間に対する得点リターンの期待が全教科全科目の中で最も高い科目です。わずかな勉強で平均点をとることは地理や現社の方が容易ですが、政経は8割以上の高得点帯に至ってもなお勉強時間に比例して素直に点が伸びやすく、また、実力があれば問題の難易度に関わらず安定して高得点がとれる科目です。このような本番で裏切らない科目は、逆転合格を狙う者にとって非常に心強い味方になります。政経以外の科目の場合、本人としては「この科目で得点を稼ごう」と計画していても、年度による難易度の違いや出題分野の得意不得意により、計画通りの点がとれずに予定が狂うケースがよくあります。注意しなければならないのは、偏差値でみれば平常通りの実力が発揮できたとしても、得点の絶対値としては低く抑え込まれてしまうことがよくある点です。こうした中で、政経はほぼ期待通りの絶対値としての得点が取れる数少ない科目です。特に主要科目で難問が出題され平均点が低く抑え込まれた年においては、政経で取った高得点の絶対値は非常に有利に働きます。
上の大分大学の例でも分かるように、理系の学部においては、共通テストの文系科目の配点がそれなりに高いことがよくあります。政経が選択でき且つ自分の志望校がそのような配点になっている場合には、政経の勉強に力を入れましょう。政経の科目の特性としてのコストパフォーマンスの高さを鑑みると、上記の大分大の配点の例でいえば、得点効率の高い政経75点の方が、得点効率が低い国語150点よりも逆転合格を狙う上では重要になります。
心理的な問題として、理系受験生の中には、文系科目ができないことをむしろ自慢げに語るタイプがいます。こうした言説に引きずられないようにしましょう。逆転合格を狙う場合には、とにかく取りやすいところから点をかき集める感覚をもつことが大切です。
⑦国語は漢文のみやる
標準レベルの国立大学理系の場合、センター試験では文系科目の配点が、二次試験では理数の配点が高くおかれているケースが多くあります。そのため、国語の負担が気になるかもしれません。しかし、国語は全科目の中でも最も標準偏差が小さくでる傾向がある科目です。つまり、パッと見たところ壊滅的な偏差値をとっている場合でも、実は得点の絶対値としてはそれほど平均点と離れていないケースが多くあります。
早稲田大学文系のように、各科目の素点を標準偏差に基づいて再配分するケースは別ですが、その他大部分の大学においては、国語は合否を分ける科目にはなりません。また、現代文や古文は、かけた時間に対するリターンが必ずしも見込めず、率直にいえばセンスがなければ他を圧倒する得点を期待することが極めて難しい科目です。
国語の中で一番リターンが見込める科目は漢文です。同じ古典としてくくられていますが、古文と漢文とは、得点パフォーマンスの観点からみれば対極にあります。しかし、国公立大学理系の場合、国語の配点で漢文が除外される、もしくは配点が低く割り当てられているケースがよくあります。自分の志望大学がどうなっているかを確認し、もし漢文が圧縮されないのであれば、対策をとる旨味はあります。国語にアレルギーがなければ、共通テスト逃げ切りの一助としましょう。日栄社漢文ノートや実況中継シリーズのような講義型参考書など、さらりと読める1冊をこなすだけでも50点中35~40点程度は見込める十分な効果があります。
まとめ
国公立理系は戦略的有効性が高い
まとめると「①共通テスト対策に絞り、逃げ切りを図る。②理科の選択科目はできる限り化学+生物or地学を選択する。③理科2科目のうち、共通テストにしか使わない科目は事実上捨てる。④数学が二次試験科目にあり配点が高い場合でも共通テスト対策に集中し、数Ⅲは事実上捨てる。⑤重点は、共通テストの英語および二次でも使う理科1科目に置く。⑥社会は得点効率の良い科目を選択し志望校において共通テストの配点が高い場合には理系だからと手を抜かずむしろ力を入れる。⑦現代文・古文は放置してよい。漢文だけは圧縮されないなら対策することも考える」といった要領になります。これによって短期間で十分に合格ラインを上回ることができ、学校の進路指導では絶対無理といわれた学校でも逆転合格が可能です。逆に何から何までやろうとすると、心理的な負荷も大きくなり集中力が削がれますし、全科目が中途半端なまま試験当日を迎えることになります。
「理想的な合格パターン」に振り回されるな
現代の受験生は情報に恵まれていますが、一方で大量の情報に飲み込まれ右往左往している子も多く見られます。親がこういっていた、学校の先生がああいっていた、友達がこういっていた、東大生youtuberがこういってた、twitterで一流大出身のフォロワーからこういわれた……こうしたアドバイスは非常に有益なものもありますが、合格直後に書かれた体験記や受験指導の経験のない人のアドバイスには、自己の経験を過度に一般化したものや理想化されたストーリーを悪意なく語ったものがよくあります。また、そもそも語り手が偏差値70前後の名門高校から旧帝大や早慶等に進学した難関校出身者であることが多いため、偏差値60前後の高校から大分大・佐賀大などの一般的レベルの国公立大学を志望する受験生にとってはむしろ害になる話も多くあることに留意しましょう。
とにかく総合点が合格最低点を0.1点でも上回ればいいわけです。東大京大医学部等の全科目にわたって高い得点が要求される高難度の国立大理系は別として、一般的な国立大理系は戦略的逆転を狙いやすく、ゆえに学校の三者面談では無理といわれた生徒を数多く合格させた経験があります。
学科によっては入学後に物理や数Ⅲの基礎が分からないと困ることもあります。しかし、それは合格してから自分でやればいいのです。幸いスタサプもあればyoutubeもある時代です。
まずは合格しましょう。そのためには、ただ漠然と勉強するのではなく、戦略的に攻略することが大切です。